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フランス / AOC

バニュルス

Banyuls

バニュルス(Banyuls)はフランスのAOC。規定に16品種が列挙されている。比率が決まっているのはグルナッシュ(トラディショネルでは50%以上/リマージュの主要品種)など16品種。当サイトは一次資料3件から引いている。

当サイト初のヴァン・ドゥー・ナチュレル(VDN)。発酵の途中で96%以上のアルコールを果汁の体積の5〜10%加えて発酵を止める。他の産地が上限で縛るのに対して、ここは度数も糖も下限で縛る。

規定で認められている品種

生産規定に列挙されている品種です。当サイトに解説ページがあるものはリンクしています。

黒ぶどう・共通

  • グルナッシュトラディショネルでは50%以上/リマージュの主要品種
  • グルナッシュ・グリアンブレ・ブラン・ロゼ・トラディショネルの主要品種
  • グルナッシュ・ブランアンブレ・ブラン・ロゼの主要品種
  • マカブーアンブレ・ブラン・ロゼの主要品種
  • トゥルバアンブレ・ブラン・ロゼの主要品種
  • ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン補助/ミュスカ2種で作付けの20%以下
  • ミュスカ・ダレクサンドリー補助/ミュスカ2種で作付けの20%以下
  • カリニャン補助/同じ区画の中で合計10%以下
  • サンソー補助/同じ区画の中で合計10%以下
  • ムールヴェードル補助/同じ区画の中で合計10%以下
  • シラー補助/同じ区画の中で合計10%以下
  • クーノワーズ補助/同じ区画の中で合計10%以下
  • マルサンヌアンブレ・ブランの補助/同じ区画で合計10%以下
  • ルーサンヌアンブレ・ブランの補助/同じ区画で合計10%以下
  • ヴェルメンティーノアンブレ・ブランの補助/同じ区画で合計10%以下
  • カリニャン・ブランアンブレ・ブランの補助/同じ区画で合計10%以下

規定の要点

  • ピレネー=オリアンタル県のバニュルス=シュル=メール、セルベール、コリウール、ポール=ヴァンドル
  • 地質はカンブリア紀の褐色片岩。標高400mまでの段々畑
  • 製法の表示が必須。アンブレ/ブラン/ロゼ/リマージュ/トラディショネルのいずれかを付ける。任意表示としてオール・ダージュ(アンブレとトラディショネルのみ)とランシオ
  • 品種の組み合わせは、この5つの表示ごとに別々に決まっている(第V章1°)
  • 比率の規定は「かかる対象」が2種類ある。ミュスカ2種の合計20%以下とトラディショネルのグルナッシュ50%以上は経営体の作付け全体、補助品種の合計10%以下は同じ区画の中で数える(第V章2°)
  • 最低糖度は252 g/l(第VII章2°)。最低自然アルコール度数の規定は無い
  • 収量は果汁で30 hl/ha、rendement butoir は果汁で40 hl/ha(=ワインではなく果汁のヘクトリットルで書かれている)
  • 40 hl/haを超えると、その収穫は全量がAOCを名乗れなくなる(第VIII章3°)
  • 植栽密度は1haあたり4,000株以上。畝間2.50m以下、1株あたり2.50m²以下(正方形・千鳥植えは3m²)
  • ミュタージュ(アルコール添加)は発酵途中の果汁に行う
  • 96%vol以上の中性のワイン由来アルコールを、純アルコール換算で果汁の体積の5%以上10%以下加える。追いミュタージュを含めて合計10%まで
  • ミュタージュは収穫年の12月31日までに行う
  • リマージュは果皮ごと(sur grains)のミュタージュが義務
  • 実アルコール度数15%以上、総アルコール度数21.5%以上(すべて下限)
  • ぶどうは手摘みで、何度かに分けて選びながら収穫する(tries successives)
  • 熟成はブランとリマージュが還元的な環境で収穫翌年の5月1日まで(うち瓶内で3か月以上)、アンブレとトラディショネルが酸化的な環境で3年目の3月1日まで、オール・ダージュが5年目の9月1日まで。ロゼには熟成の規定が無い
  • 消費者への販売はブランとリマージュが翌年5月1日から、アンブレとトラディショネルが3年目の3月1日から、オール・ダージュが5年目の9月1日から

この産地でわかったこと

他の産地が上限で縛るところを、この産地は下限で縛ります。実アルコール度数15%以上、総アルコール度数21.5%以上、最低糖度252 g/l。普通の生産規定は「13.5%を超えてはならない」「4 g/l以下」と書きますが、ヴァン・ドゥー・ナチュレルは糖が残っていることが前提なので、向きが逆になります。そして最低自然アルコール度数の規定がありません。あとからアルコールを足す酒なので、果汁の糖さえあれば度数は後で作れる、という設計です。ミュタージュ(アルコール添加)の書き方も独特で、96%vol以上の中性のワイン由来アルコールを、純アルコール換算で果汁の体積の5〜10%という体積比の帯で縛り、さらに12月31日という期限とリマージュは果皮ごとという方法まで指定しています。収量が「ワイン」ではなく「果汁」のヘクトリットルで書かれているのも、後からアルコールを足す酒だからです。比率の規定も読みどころで、同じ条文の中で「経営体の作付け全体」と「同じ区画の中」が使い分けられています。ミュスカの20%は経営体ぜんぶ、補助品種の10%は区画ごと。ボジョレーの補助品種が2つの枠に分かれていたのと似た構造です。

出典

生産規定フランス農業・食料主権省 BO-AGRI(官報)
https://info.agriculture.gouv.fr/boagri/document_administratif-11ae2967-6953-47fb-8c7b-7832cd296ce9/telechargementAOC「Banyuls」生産規定(統合版)。décret n° 2011-1616 du 23 novembre 2011 でホモロゲーション、arrêté du 31 juillet 2017(JORF 2017年8月8日)で改正、2018年8月10日BO-Agri公示。第I章 II・V・VII・VIII・IX(2026年10月19日に確認)「Le mutage est réalisé par apport d'alcool neutre vinique titrant au minimum 96 % vol.」

生産規定フランス農業・食料主権省 BO-AGRI(官報)
https://info.agriculture.gouv.fr/boagri/document_administratif-11ae2967-6953-47fb-8c7b-7832cd296ce9/telechargement同 第I章 V項2°。トラディショネルのグルナッシュの下限と、その判定対象「La proportion cépage grenache N est supérieure ou égale à 50 %」

生産規定フランス農業・食料主権省 BO-AGRI(官報)
https://info.agriculture.gouv.fr/boagri/document_administratif-11ae2967-6953-47fb-8c7b-7832cd296ce9/telechargement同 第I章 VII項2°。果汁の最低糖度「richesse naturelle minimale en sucre de 252 grammes par litre」

規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。