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「何%」の前に「何に対しての%か」——ワインの比率規定は、3つの違うものを数えている

ワインの生産規定に出てくる品種の比率は、「経営体の作付け全体」「ひとつの区画」「アッサンブラージュ(出荷するワイン)」のいずれに対する割合なのかが条文で指定されており、産地によって違う。エルミタージュは同じ85%という数字を作付けとアッサンブラージュの両方に別々に課し、マルゴーのカステは作付けで5%以下・アッサンブラージュで10%以下と上限そのものが違う。

生産規定が「この品種を50%以上」と書くとき、その50%は何に対しての50%なのか。当サイトが読んだ範囲では、答えが3通りありました。経営体の畑ぜんぶ/ひとつの区画/瓶の中(アッサンブラージュ)。そして同じ産地の中で、この3つが混ざって使われていることがあります。

品種の比率が「何に対しての割合か」を3分類で並べた図経営体の作付け全体:エルミタージュ、マルゴー、バニュルス、ボジョレー、アルザス、アルザス・グラン・クリュ、ヴァケラス/ひとつの区画:エルミタージュ、バニュルス、ボジョレー、ペサック・レオニャン、シャトー・シャロン/アッサンブラージュ:エルミタージュ、マルゴー、アルザス「◯%以上」は、何に対しての◯%か生産規定は、同じ「割合」という言葉で3つの違うものを数えている。同じ産地が2つ以上を使い分けることもある。経営体の作付け全体その呼称を産する事業者の、全部の区画をまとめて数えるエルミタージュシラーが作付けの85%以上マルゴーカステが作付けの5%以下バニュルスミュスカ2種で20%以下/グルナッシュ50%以上ボジョレー植栽構成の適合は全区画をまとめて判定アルザス適応品種が作付け全体の5%以下アルザス・グラン・クリュ比率は全区画をまとめて判定ヴァケラス赤の4段重ねの比率をすべて全区画で判定ひとつの区画畑を1枚ずつ見て、その中の割合で数えるエルミタージュシラーの区画に15%まで混植してよいバニュルス補助品種の合計が10%以下ボジョレー混植の補助品種が各区画で15%以下ペサック・レオニャン高接ぎ更新の特例で各区画の80%シャトー・シャロン若木は当該区画の作付けの80%までアッサンブラージュ出荷するワインに混ぜた結果の割合で数えるエルミタージュシラーがアッサンブラージュの85%以上マルゴーカステがアッサンブラージュの10%以下アルザス適応品種がブレンドの10%以下winovibe / 出典は各産地の生産規定(ページ下の表からたどれます)
当サイトが読んだ生産規定から、品種の比率が「何に対しての割合か」で分けたもの。同じ産地が複数の欄に出てくることがあります。

3つの「割合」

たとえば「グルナッシュ50%以上」と書いてあっても、畑に植わっている木の50%なのか、瓶に入っている液体の50%なのかで、意味はまるで違います。前者なら畑を植え替えない限り動かせませんし、後者なら毎年の仕込みで調整できます。規定はそこを取り違えないように、どちらなのかを条文で指定しています。

何に対しての割合か条文の言い方動かせるもの
経営体の作付け全体encépagement de l'exploitation / 全区画をまとめて植え替えないと動かない
ひとつの区画encépagement de la parcelle / 各区画の中で畑1枚ずつの設計
アッサンブラージュdans l'assemblage / 出荷するワインの中で毎年の仕込みで決まる

エルミタージュは、3つ全部を使っている

エルミタージュの赤は、シラーがアッサンブラージュの85%以上。ここまでは普通です。ところが規定はさらに、畑の側でも作付けの85%以上という別建ての条文を持っています。そのうえで残りのマルサンヌ・ルーサンヌについては「シラーの区画に15%まで混植してよい」と、区画の話として書く。

同じ85%という数字が、畑と瓶に二重にかかっている。どちらか一方だけを読むと「85%」で済んでしまいますが、実際には「畑でも85%、瓶でも85%」という二段の縛りです。当サイトが読んだ産地で、3つの数え方を全部使っているのはここだけでした。

マルゴーは、同じ品種に違う上限を置いている

マルゴーが2023年の改正で加えたカステ(castets N)は、経営体の作付け全体に対して5%以下、アッサンブラージュに対して10%以下。数字そのものが違います。

畑では5%しか植えられないのに、瓶の中では10%まで入れてよい。収量は年によって動きますから、畑の割合と瓶の割合は一致しません。温暖化に合わせて新しい品種を試すための枠なので、「畑では慎重に、使い方には幅を」という設計に読めます。片方だけを書くと誤りになるのは、この差があるからです。

同じ条文の中で使い分けている産地

バニュルスは、同じ第V章2°の中で切り替えます。ミュスカ2種の合計20%以下とグルナッシュ50%以上は経営体の作付け全体、補助品種の合計10%以下は同じ区画の中。

ボジョレーも同じ形です。ガメイ・ド・ブーズとガメイ・ド・ショドネは植栽構成の10%以下で全区画をまとめて判定、それ以外の補助品種は混植の形でのみ認められて各区画の中で15%以下。「補助品種は合わせて何%」と1行にまとめてしまうと、この2枠が潰れます。

区画の側にしか出てこない使い方

比率が区画だけに出てくるとき、それは品種の設計ではなく植え替えの経過措置であることが多い、というのも分かりました。ペサック・レオニャンの「高接ぎ更新の第3タイユまでは各区画の80%でよい」、シャトー・シャロンの「若木は当該区画の作付けの80%まで」。どちらも畑を建て替えている途中の畑を、規定から落とさないための条文です。

全部の行

産地何に対して中身規定の文言
エルミタージュ経営体の作付け全体シラーが作付けの85%以上経営体の作付けの85%以上という別建ての規定がある
エルミタージュひとつの区画シラーの区画に15%まで混植してよいシラーの区画に15%まで混植してよい
エルミタージュアッサンブラージュシラーがアッサンブラージュの85%以上赤はシラーがアッサンブラージュの85%以上
マルゴー経営体の作付け全体カステが作付けの5%以下経営体の作付け全体に対して5%以下
マルゴーアッサンブラージュカステがアッサンブラージュの10%以下出荷するワインのアッサンブラージュに対して10%以下
バニュルス経営体の作付け全体ミュスカ2種で20%以下/グルナッシュ50%以上ミュスカ2種の合計20%以下とトラディショネルのグルナッシュ50%以上は経営体の作付け全体
バニュルスひとつの区画補助品種の合計が10%以下補助品種の合計10%以下は同じ区画の中で数える
ボジョレー経営体の作付け全体植栽構成の適合は全区画をまとめて判定植栽構成の適合は、そのAOCを産する経営体の全区画をまとめて判定する
ボジョレーひとつの区画混植の補助品種が各区画で15%以下各区画の中で合計15%以下
アルザス経営体の作付け全体適応品種が作付け全体の5%以下経営体の作付け全体の5%以下
アルザスアッサンブラージュ適応品種がブレンドの10%以下ブレンドでは10%以下
アルザス・グラン・クリュ経営体の作付け全体比率は全区画をまとめて判定その呼称を産する経営体の全区画をまとめて行う
ヴァケラス経営体の作付け全体赤の4段重ねの比率をすべて全区画で判定いずれも経営体の全区画で判定
ペサック・レオニャンひとつの区画高接ぎ更新の特例で各区画の80%各区画の作付けの80%でよい
シャトー・シャロンひとつの区画若木は当該区画の作付けの80%まで当該区画の作付けの80%まで

この表は、当サイトが生産規定を確認できた産地のうち、比率の「かかる対象」が条文から読み取れたものだけを並べています。比率の規定そのものが無い産地(アメリカのAVAなど)や、対象が書かれていない産地は入っていません。各行は、リンク先の産地ページから一次資料にたどれます。

この記事で読んだ産地

出典

生産規定エルミタージュ
https://winovibe.com/regions/hermitage/この産地の一次資料(1件)はリンク先に載せています

生産規定マルゴー
https://winovibe.com/regions/margaux/この産地の一次資料(2件)はリンク先に載せています

生産規定バニュルス
https://winovibe.com/regions/banyuls/この産地の一次資料(3件)はリンク先に載せています

生産規定ボジョレー
https://winovibe.com/regions/beaujolais/この産地の一次資料(14件)はリンク先に載せています

生産規定アルザス
https://winovibe.com/regions/alsace/この産地の一次資料(2件)はリンク先に載せています

生産規定アルザス・グラン・クリュ
https://winovibe.com/regions/alsace-grand-cru/この産地の一次資料(4件)はリンク先に載せています

生産規定ヴァケラス
https://winovibe.com/regions/vacqueyras/この産地の一次資料(3件)はリンク先に載せています

生産規定ペサック・レオニャン
https://winovibe.com/regions/pessac-leognan/この産地の一次資料(3件)はリンク先に載せています

生産規定シャトー・シャロン
https://winovibe.com/regions/chateau-chalon/この産地の一次資料(3件)はリンク先に載せています

規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。