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フランス / AOC

アルザス・グラン・クリュ

Alsace Grand Cru

アルザス・グラン・クリュ(Alsace Grand Cru)はフランスのAOC。規定に9品種が列挙されている。比率が決まっているのはリースリング(単独で名乗れる。アルテンベルク・ド・ベルクハイムでは50〜70%)など9品種。当サイトは一次資料4件から引いている。

ひとつのAOCに見えて、実は51の独立した原産地呼称が横並びになっている。「アルザス・グラン・クリュ+リュー・ディ名」がそれぞれ別の登録番号を持ち、包括的な親の呼称は存在しない。ほとんどの規定は共通で、リュー・ディごとに違うのは使える品種と、一部の比率・糖度・補糖の規定。

規定で認められている品種

生産規定に列挙されている品種です。当サイトに解説ページがあるものはリンクしています。

現行の統合版(2024年7月4日のアレテ)そのものは取得できませんでした。上の数値は、官報に公示された2022年5月9日版の本文と、2024年7月4日版をベースにした改正案(PNO)の本文を突き合わせ、両者が完全に一致した項目だけを載せています。また当ページはアルテンベルク・ド・ベルクハイム/カフェルコプフ/ランゲンの3つを読んだもので、51すべてのリュー・ディを確認したわけではありません。毎年の省令で決まるリュー・ディごとの年次の最低糖度は、公式のLégifranceが読めず非公式のミラー経由だったため、当ページからは外しました。

黒ぶどう・共通

  • リースリング単独で名乗れる。アルテンベルク・ド・ベルクハイムでは50〜70%
  • ゲヴュルツトラミネール単独で名乗れる。カフェルコプフでは60〜80%
  • ピノ・グリ単独で名乗れる。カフェルコプフでは30%以下
  • ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グランミュスカ3種どうしのアッサンブラージュのみ可
  • ミュスカ・オットネルミュスカ3種どうしのアッサンブラージュのみ可
  • シルヴァーナーツォッツェンベルクのみ
  • シャスラアルテンベルク・ド・ベルクハイムのみ/2005年3月26日より前に植えた樹に限る
  • ピノ・ブランアルテンベルク・ド・ベルクハイムのみ/2005年3月26日より前に植えた樹に限る
  • ピノ・ノワールアルテンベルク・ド・ベルクハイムのみ/2005年3月26日より前に植えた樹に限る

規定の要点

  • 「アルザス・グラン・クリュ + リュー・ディ名」の組み合わせが、1件ずつ別の登録番号を持つ51の独立した原産地呼称になっている。包括的な「アルザス・グラン・クリュ」単独の呼称は存在しない
  • 同じラベルに2つ以上のリュー・ディ名を併記することは禁止(=リュー・ディをまたいだブレンドができない)
  • 原則は単一品種。ゲヴュルツトラミネール/ミュスカ・ブラン/ミュスカ・ルージュ/ミュスカ・オットネル/ピノ・グリ/リースリングのいずれか1品種、またはミュスカ3種どうしのアッサンブラージュだけが認められる(第V章1°a)。ランゲンはこの一般規則どおりで、固有の比率規定を持たない
  • 例外が2つある。アルテンベルク・ド・ベルクハイムとカフェルコプフだけが複数品種のアッサンブラージュを認められ、そこに比率の帯が置かれている
  • アルテンベルク・ド・ベルクハイム:主要品種はリースリング50%以上70%以下、補完品種のゲヴュルツトラミネールとピノ・グリが各10%以上25%以下、補助品種(シャスラ/ミュスカ3種/ピノ・ブラン/ピノ・ノワール)は合計10%以下。アッサンブラージュにはリースリング・ゲヴュルツトラミネール・ピノ・グリの3品種が必須で、圧搾の段階で混ぜる(第IX章1°b)
  • カフェルコプフ:ゲヴュルツトラミネール60%以上80%以下、リースリング10%以上40%以下、ピノ・グリ30%以下、ミュスカ3種合計10%以下
  • 比率の判定は区画ごとではなく、その呼称を産する経営体の全区画をまとめて行う(`appréciée sur la totalité des parcelles de l'exploitation`)
  • 収量は50 hl/ha(白)、rendement butoir は60 hl/ha(白)、rendement maximum de production は77 hl/ha(=3段構え)。2022年5月9日のアレテで、それまでの55/66から引き下げられた
  • 2022年の改正で一部のグラン・クリュに赤(ピノ・ノワール)が認められた。赤は収量40 hl/ha、butoir 48 hl/ha
  • 最低糖度は生産規定の側にもある(第VII章2°a)。一般の値はゲヴュルツトラミネールとピノ・グリが195 g/l(12.5%)、リースリングとその他が170 g/l(11%)。アルテンベルク・ド・ベルクハイムだけが高く設定されていて、ゲヴュルツトラミネールとピノ・グリが221 g/l(14%)、リースリングが187 g/l(12%)
  • ヴァンダンジュ・タルディヴとセレクシオン・ド・グラン・ノーブルの最低糖度は51の呼称で共通。VTはゲヴュルツトラミネールとピノ・グリが270 g/l(16%)、ミュスカとリースリングが244 g/l(14.5%)。SGNはそれぞれ306 g/l(18.2%)と276 g/l(16.4%)
  • カフェルコプフのピノ・グリだけは、ヴァンダンジュ・タルディヴとセレクシオン・ド・グラン・ノーブルを名乗れない
  • 補糖の上限が品種で違う。ゲヴュルツトラミネールとピノ・グリは+0.5%vol、その他は+1.5%vol。ただしアルテンベルク・ド・ベルクハイムは補糖が全面禁止(第IX章1°e)
  • ぶどうは手摘み(récoltés manuellement)。木片の使用は禁止
  • 植栽密度は1haあたり4,500株以上。畝間2m以下、株間0.75〜1.50m(EU登録版より)
  • ツォッツェンベルクだけがシルヴァーナーを認められている(EU登録版より)
  • 出荷解禁は白が収穫の翌年6月1日、赤が翌年10月1日、VT・SGNが翌々年6月1日から

この産地でわかったこと

51の独立した呼称が横並びになっている——これが構造の核心です。親の「アルザス・グラン・クリュ」があってその下にリュー・ディがぶら下がる入れ子ではなく、「アルザス・グラン・クリュ・ランゲン」「アルザス・グラン・クリュ・カフェルコプフ」がそれぞれ別の呼称として登録されている。2つ以上のリュー・ディ名を1枚のラベルに書くことが禁止されているので、この51の分岐はブレンドで混ざることがありません。さらに読んでいくと、51は横並びでも、同じ規則で動いているわけではないことが分かります。原則は単一品種なのに、アルテンベルク・ド・ベルクハイムとカフェルコプフの2つだけが複数品種のアッサンブラージュを許され、そこにだけ比率の帯が書かれている。アルテンベルクはリースリング50〜70%、カフェルコプフはゲヴュルツトラミネール60〜80%。しかもアルテンベルクだけは補糖が全面禁止で、最低糖度も他より高い(221 g/l)。広いアルザスが品種の比率をいっさい縛らないのに対して、畑の名前がつく段で初めて縛りが現れ、さらにその中で2つだけが別の設計になっている——三層になっているわけです。なお最低糖度には二階建ての仕組みがあります。生産規定が上の下限表を持ち、そのうえで毎年の省令がリュー・ディごとにその年の値を設定する。同じ呼称でも年によって実際の線が動きます。

出典

生産規定フランス農業・食料主権省 BO-AGRI(官報)
https://info.agriculture.gouv.fr/boagri/document_administratif-4cec3ff9-abd4-4253-a1db-245ddd809faa/telechargementAOC「Alsace grand cru」生産規定。décret n° 2011-1373 du 25 octobre 2011 でホモロゲーション、arrêté du 9 mai 2022(JORF 2022年5月13日)で改正、2022年6月23日BO公示。現行はさらに arrêté du 4 juillet 2024(JORF 2024年7月7日)。第I章 II・V・VII・VIII・IX(2026年10月19日に確認)「appréciée sur la totalité des parcelles de l'exploitation produisant le vin de l'appellation」

生産規定INAO(フランス国立原産地・品質研究所)— 2024年9月の改正案(PNO)
https://extranet.inao.gouv.fr/fichier/pno-cdc-Alsacegrandcru-cn240911.pdf2024年7月4日施行版をベースにした改正案。上の官報版と数値が一致することの確認に使用。改正の連鎖(2016年6月20日/2022年5月9日/2024年7月4日)はこの文書のヘッダから取った

生産規定欧州委員会 eAmbrosia — Alsace grand cru Rangen 技術仕様書(EU登録版)
https://webgate.ec.europa.eu/eambrosia-api/api/v1/attachments/10613PDO-FR-A0386。植栽密度と畝間・株間はこの要約文書による(2026年10月6日に確認)「L'emploi de deux ou plusieurs dénominations en usage sur une même étiquette est interdit」

生産規定欧州委員会 eAmbrosia — Alsace grand cru Zotzenberg 技術仕様書(EU登録版)
https://webgate.ec.europa.eu/eambrosia-api/api/v1/attachments/10793PDO-FR-A0916。ツォッツェンベルクにシルヴァーナーが認められていることの出典(2026年10月6日に確認)

規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。