マルゴー(Margaux)はフランスのAOC。規定に7品種が列挙されている。比率が決まっているのはカベルネ・ソーヴィニヨン(主要品種)など7品種。当サイトは一次資料2件から引いている。
メドックの4コミューン、赤だけ。主要品種どうしの比率規定はない。ただし収量の絶対上限が、畝の間隔と垣根の高さの比という仕立ての形によって63 hl/haから60 hl/haへ下がる。
規定で認められている品種
生産規定に列挙されている品種です。当サイトに解説ページがあるものはリンクしています。
黒ぶどう・共通
- カベルネ・ソーヴィニヨン主要品種
- メルロー主要品種
- カベルネ・フラン主要品種
- プティ・ヴェルド主要品種
- コット(マルベック)主要品種
- カルメネール主要品種
- カステ適応目的の関心品種/作付け全体の5%以下・アッサンブラージュの10%以下
規定の要点
- 赤のスティルワインだけ
- 4コミューン(アルサック/ラバルド/マルゴー=カントナック/スーサン)。マルゴーとカントナックは合併して1つのコミューンになっている
- 第四紀・鮮新世の段丘砂礫層、中位・低位段丘の砂礫質土壌
- 主要品種どうしの比率規定はない(6品種が横並びで、主要・補助の区別もない)
- 2023年の改正で「適応目的の関心品種(variété d'intérêt à fin d'adaptation)」としてカステ(castets N)が加わった。INAO・ODG・事業者間の協定への署名が条件
- カステの比率には2つの別々の上限がある。経営体の作付け全体に対して5%以下(第V章2°)と、出荷するワインのアッサンブラージュに対して10%以下(第IX章1°a)。かかる対象が違うので、片方だけ書くと誤りになる
- 収量は57 hl/ha、rendement butoir は63 hl/ha
- ただし、畝間が1.40〜1.50mで、かつ「垣根の葉の高さ÷畝間」が0.6〜0.7の畑については、rendement butoir が60 hl/haに下がる(第VIII章2°b)
- 植栽密度は1haあたり7,000株以上。畝間1.50m以下、1株あたりの面積1.43m²以下
- 剪定は遅くとも「葉が展開した段階(ロレンツ第9段階)」まで。1株あたり12芽まで。アストあたりの芽数は品種で違い、コット・カベルネ・ソーヴィニヨン・メルロー・プティ・ヴェルドが4芽以下、カベルネ・フランとカルメネールが5芽
- 最低糖度はメルローが189 g/l、その他の品種が180 g/l(第VII章2°a)。最低自然アルコール度数は11%。補糖後の総アルコール度数の上限は13.5%
- 見出しに「マロラクティック発酵」とあるが、中身はリンゴ酸0.30 g/l以下という上限だけで、発酵を義務づける条文ではない
- 発酵性糖は2 g/l以下。減算式の濃縮(TSE)は濃縮率15%まで
- 熟成は収穫の翌年6月1日まで。容器詰めは翌年6月1日から3年目の12月31日まで
- 消費者への販売は収穫の翌年9月1日から
この産地でわかったこと
収量の絶対上限が、仕立ての形によって変わります。ふつうは63 hl/haですが、畝間が1.40〜1.50mで、かつ垣根の葉の高さを畝間で割った値が0.6〜0.7の畑では60 hl/haに下がる。当サイトの産地で、収量上限が品種でも色でもなく畑の幾何学的な形で分岐するのはここだけです。葉の面積と収量のバランスを規定が直接見ている、ということになります。もうひとつ、2023年の改正で入ったカステの扱いが面白い。比率の上限が2つあって、片方は「経営体の作付け全体の5%以下」、もう片方は「アッサンブラージュの10%以下」。畑での割合と、瓶の中での割合を別々に縛っているわけです。畑で5%しか植えていなくても、その年の収量次第で瓶の中では10%まで入れられる。温暖化に合わせて品種を試すための枠なので、「畑では慎重に、使い方には幅を」という設計に読めます。なお生産規定には「カベルネ・ソーヴィニヨンはメドックの王の品種で、作付面積の60%近くを占める」という記述がありますが、これは地理的環境との結びつきを説明する文章で、拘束力のある比率規定ではありません。当サイトでは比率として扱っていません。
出典
生産規定フランス農業・食料主権省 BO-AGRI(官報)
https://info.agriculture.gouv.fr/boagri/document_administratif-e303df21-7cba-4e9b-9c6a-b1d80356019f/telechargementAOC「Margaux」生産規定(統合版)。arrêté du 31 mars 2023 でホモロゲーション、2023年4月5日JORF掲載、2023年4月13日BO公示。第I章 II・IV・V・VI・VII・VIII・IX(2026年10月19日に確認)「Pour les vignes dont l'écartement est compris entre 1,40 mètre et 1,50 mètre inclus et dont la hauteur de feuillage palissé est comprise entre 0,6 et 0,7 fois l'écartement entre les rangs, le rendement butoir est fixé à 60 hectolitres par hectare」
生産規定フランス農業・食料主権省 BO-AGRI(官報)
https://info.agriculture.gouv.fr/boagri/document_administratif-e303df21-7cba-4e9b-9c6a-b1d80356019f/telechargement同 第I章 V項2°。カステの作付けに対する上限と、その判定対象「La proportion de la variété d'intérêt à fin d'adaptation castets N est inférieure ou égale à 5% de l'encépagement de l'exploitation.」
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。