ヤキマ・ヴァレー(Yakima Valley)はアメリカのAVA。規定は品種の比率を定めていない。当サイトは一次資料3件から引いている。
ワシントン州で最初に承認されたAVAのひとつ。約1,040平方マイル。年降水量は8.11インチしかなく、ヤキマ川からの灌漑が栽培を可能にしている。レッド・マウンテンの親であり、コロンビア・ヴァレーの子。
規定に名前が出てくる品種
アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。
1,040平方マイルから1,093平方マイルへの変更の経緯は取得できませんでした。1983年の規則が約1,040平方マイル、2020年の規則が1,093平方マイルと書いていますが、再測か修正かを述べた一次資料に到達できていません。2020年の拡張後の総面積も規則に書かれていません(「1,093平方マイル+72エーカー」とだけ書かれています)。
黒ぶどう・共通
- リースリング制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
- シャルドネ制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
- カベルネ制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
- ピノ・ノワール制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
- ゲヴュルツトラミネール制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
- セミヨン制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
- コンコード制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
- アイランド・ベル制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない(1983年当時の実態)
規定の要点
- 27 CFR § 9.69。T.D. ATF-128、48 FR 14375(1983年4月4日)。改正はT.D. TTB-163、85 FR 60361(2020年9月25日)
- ワシントン州ベントン郡・ヤキマ郡
- § 9.69 の条文には「Columbia Valley」の文字がない(コロンビア・ヴァレーの設定が1984年11月なので当然)。2020年の改正規則が「ヤキマ・ヴァレーとキャンディ・マウンテンは、どちらも既存のコロンビア・ヴァレーAVAの内側に完全に位置する」と明記している
- 承認地図は5枚(Walla Walla と Yakima の1:250,000図、Benton City/Badger Mountain/Richland の1:24,000図。後3枚は2020年の改正で追加)
- 境界はワパトー・ダムを起点に16点。尾根線と等高線をたどり、ラトルスネイク・ヒルズ/レッド・マウンテン/トッペニッシュ・リッジ/アータナム・リッジといった地形名を使う
- 面積は1983年の原規則が「長さ約75マイル、最大幅22マイル、約1,040平方マイル」。2020年の改正規則は「既存の1,093平方マイルのAVA」を約72エーカー拡張した
- ウィンクラー区分はリージョンII。8地点の平均積算温度は2,641単位(トッペニッシュ2,207/プロッサー2,436/サニーサイド2,665/最高はワパトーの3,048)
- 年降水量は8地点平均でわずか8.11インチ(トッペニッシュ5.88〜フォート・シムコー12.41)。ヤキマ川からの灌漑が栽培を可能にしている
- 土壌は斜面がウォーデン=シャノ連合、ヤキマ川沿いがスクーテニー=スターバック連合
- AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
この産地でわかったこと
当サイトで唯一、三重の入れ子がすべて一次資料で裏づけられる真ん中の環です。レッド・マウンテンの条文が「ヤキマ・ヴァレーの内側に完全に含まれる」と書き、2020年の改正規則が「ヤキマ・ヴァレーはコロンビア・ヴァレーの内側に完全に位置する」と書く。それぞれ別の一次資料で、1本ずつ裏が取れています。面白いのは、1983年の条文にはコロンビア・ヴァレーの文字がないこと。コロンビア・ヴァレーの設定が1984年11月なので、子のほうが先にでき、親が後からできたわけです。この産地の性格は年降水量8.11インチという数字に尽きます。親のコロンビア・ヴァレーが16インチ未満ですから、さらに乾いている。ヤキマ川の灌漑なしには成立しません。斜面の土壌がレッド・マウンテンと同じウォーデン=シャノなのに、レッド・マウンテンの最終規則は「周囲のヤキマ・ヴァレーは別の土壌連合」と書いている。同じ連合が、片方では「共通点」、片方では「相違点」として使われています。
出典
生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.69 Yakima Valley
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.69名称・承認地図・境界の条文と改正履歴(2026年10月6日に確認)
生産規定アルコール・タバコ税貿易局(TTB)— Yakima Valley 最終規則
https://www.ttb.gov/system/files/images/pdfs/Yakima_Valley_final_rule.pdfT.D. ATF-128、48 FR 14375(1983年4月4日)。面積・積算温度・降水量・土壌・品種(2026年10月6日に確認)「Eight reporting stations within the viticultural area average only 8.11 inches of precipitation per year」
生産規定連邦官報(Federal Register)— キャンディ・マウンテンAVAの設定とヤキマ・ヴァレーの修正
https://www.federalregister.gov/documents/2020/09/25/2020-18741/establishment-of-the-candy-mountain-viticultural-area-and-modification-of-the-yakima-valleyT.D. TTB-163、85 FR 60361(2020年9月25日)。コロンビア・ヴァレーの内側であることの明文(2026年10月6日に確認)「Both the existing Yakima Valley viticultural area and the newly established Candy Mountain viticultural area are located entirely within the existing Columbia Valley viticultural area.」
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。