スパークリングワインの最低熟成期間は、産地ごとに数え始めが違うため直接は比べられない。シャンパーニュ15か月はティラージュ起点、フランチャコルタ18か月は澱の上にいた期間、カバ18か月はティラージュからデゴルジュマンまでを指す。当サイトが規定を確認した範囲では、義務のないランブルスコ・ディ・ソルバーラから60か月のフランチャコルタ・リゼルヴァまで幅がある。
シャンパーニュは15か月、フランチャコルタは18か月。並べると後者のほうが長く見える。けれど生産規定を読むと、この2つは数え始めが違う。片方はティラージュ(瓶詰め)から、もう片方は澱の上にいた期間。カバはデゴルジュマンまで、ターヴォラ・ヴァローザは門出のリキュールを加える前まで。同じ「か月」という単位を使いながら、規定が測っているものが産地ごとに違う。
数え始めが4通りある
| 産地・区分 | 最低の熟成 | 何から数えるか | 規定の文言 |
|---|---|---|---|
| ランブルスコ・ディ・ソルバーラ | 義務なし | そのほかの数え方 | 熟成の義務も出荷解禁日もない |
| プロセッコ(ロゼ) | 2か月 | そのほかの数え方 | ロゼは60日以上の製造期間 |
| カバ・デ・グアルダ | 9か月 | ティラージュ→デゴルジュマン | 澱と接触したまま同じ瓶で9か月以上 |
| ターヴォラ・ヴァローザ | 9か月 | そのほかの数え方 | 瓶内で9か月以上の熟成 |
| バイラーダ(スパークリング) | 9か月 | そのほかの数え方 | スパークリングは製造者の施設に9か月以上置くこと |
| サン・ペレー | 12か月 | ティラージュから | そこから最低12か月の熟成を経て出荷し |
| シャンパーニュ | 15か月 | ティラージュから | 出荷はティラージュから最低15か月の熟成後、ミレジメは最低36か月 |
| カバ・レセルバ | 18か月 | ティラージュ→デゴルジュマン | レセルバ18か月以上、グラン・レセルバ30か月以上、パラヘ・カリフィカード36か月以上 |
| フランチャコルタ | 18か月 | 澱の上にいた期間 | 基本18か月/ロゼ24か月/サテン24か月/ミッレジマート30か月/リゼルヴァ60か月 |
| フランチャコルタ・ロゼ/サテン | 24か月 | 澱の上にいた期間 | 基本18か月/ロゼ24か月/サテン24か月/ミッレジマート30か月/リゼルヴァ60か月 |
| カバ・グラン・レセルバ | 30か月 | ティラージュ→デゴルジュマン | レセルバ18か月以上、グラン・レセルバ30か月以上、パラヘ・カリフィカード36か月以上 |
| フランチャコルタ・ミッレジマート | 30か月 | 澱の上にいた期間 | 基本18か月/ロゼ24か月/サテン24か月/ミッレジマート30か月/リゼルヴァ60か月 |
| シャンパーニュ・ミレジメ | 36か月 | ティラージュから | 出荷はティラージュから最低15か月の熟成後、ミレジメは最低36か月 |
| カバ・パラヘ・カリフィカード | 36か月 | ティラージュ→デゴルジュマン | レセルバ18か月以上、グラン・レセルバ30か月以上、パラヘ・カリフィカード36か月以上 |
| フランチャコルタ・リゼルヴァ | 60か月 | 澱の上にいた期間 | 基本18か月/ロゼ24か月/サテン24か月/ミッレジマート30か月/リゼルヴァ60か月 |
シャンパーニュの15か月はティラージュ(瓶に詰めて二次発酵に入れる作業)からの時間、フランチャコルタの18か月は澱の上にいた期間、カバの18か月はティラージュからデゴルジュマン(澱を抜く作業)までの時間です。ターヴォラ・ヴァローザにいたっては、数え終わりが「門出のリキュールを加える前まで」という作業の手前に置かれています。単位が同じだからといって、規定が測っているものまで同じとは限りません。
ティラージュの解禁日も産地で違う
熟成の長さの前に、いつ瓶に詰めてよいかが決まっている産地があります。多くは「年を越してから」ですが、1つだけ年内に始められます。
| 産地 | ティラージュの解禁 | 規定の文言 |
|---|---|---|
| サン・ペレー | 収穫年の12月1日 | ティラージュは収穫年の12月1日以降 |
| シャンパーニュ | 収穫翌年の1月1日 | ティラージュ(瓶詰め)は収穫翌年1月1日以降 |
| カバ(スペリオール) | 収穫翌年の1月1日 | ティラージュは収穫翌年1月1日以降(第8条b-iv) |
| フランチャコルタ | 収穫翌年の2月1日 | ティラージュ(瓶詰めして二次発酵に入れる作業)は収穫翌年の2月1日から |
サン・ペレーだけが収穫年の12月1日で、ほかは収穫翌年です。熟成の起点がティラージュである産地では、この解禁日が出荷できる最短の日をそのまま決めます。サン・ペレーは12月1日+12か月で、収穫翌年の12月から出せる計算になります。
「泡立った瓶のまま売る」という規定
熟成の月数と並んで、途中で瓶を変えてはいけないと書く産地があります。サン・ペレーは「泡立ちが起きたのと同じ瓶で売る」(37.5cl以下と150cl超の瓶だけ例外)、カバはグラン・レセルバ以上で移し替え(transvase)を認めていません。カバ・デ・グアルダも「澱と接触したまま同じ瓶で」と書いています。月数が同じでも、途中で中身を移せるかどうかで工程の重さはまったく変わります。
カバだけが、熟成以外の条件を重ねている
カバの上位区分は、熟成期間のほかに樹齢10年以上の畑から穫ること、2025年の収穫分から有機栽培の認証が必須、収穫年の表示が義務という条件を重ねています。熟成の長さだけでなく、ぶどうの出どころまで段階に紐づけている産地は、当サイトが見たスパークリングの中でカバだけでした。
両端にあるもの
いちばん短いのはランブルスコ・ディ・ソルバーラで、規定に熟成の義務も出荷解禁日もありません。いちばん長いのはフランチャコルタのリゼルヴァで60か月。同じ「瓶内二次発酵のスパークリング」という括りの中に、0か月から60か月までの幅があります。
この表は、当サイトが生産規定を確認できた産地だけを並べたものです。世界中のスパークリングを網羅したものではありません。各行の数字は、リンク先の産地ページから一次資料(官報・規定の原文)にたどれます。
この記事で読んだ産地
- ランブルスコ・ディ・ソルバーラ一次資料1件
- プロセッコ一次資料2件
- カバ一次資料3件
- ターヴォラ・ヴァローザ一次資料1件
- バイラーダ一次資料1件
- サン・ペレー一次資料1件
- シャンパーニュ一次資料2件
- フランチャコルタ一次資料1件
出典
生産規定ランブルスコ・ディ・ソルバーラ
https://winovibe.com/regions/lambrusco-di-sorbara/この産地の一次資料(1件)はリンク先に載せています
生産規定プロセッコ
https://winovibe.com/regions/prosecco/この産地の一次資料(2件)はリンク先に載せています
生産規定カバ
https://winovibe.com/regions/cava/この産地の一次資料(3件)はリンク先に載せています
生産規定ターヴォラ・ヴァローザ
https://winovibe.com/regions/tavora-varosa/この産地の一次資料(1件)はリンク先に載せています
生産規定バイラーダ
https://winovibe.com/regions/bairrada/この産地の一次資料(1件)はリンク先に載せています
生産規定サン・ペレー
https://winovibe.com/regions/saint-peray/この産地の一次資料(1件)はリンク先に載せています
生産規定シャンパーニュ
https://winovibe.com/regions/champagne/この産地の一次資料(2件)はリンク先に載せています
生産規定フランチャコルタ
https://winovibe.com/regions/franciacorta/この産地の一次資料(1件)はリンク先に載せています
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。