エオラ=アミティ・ヒルズ(Eola-Amity Hills)はアメリカのAVA。規定は品種の比率を定めていない。当サイトは一次資料2件から引いている。
ウィラメット・ヴァレーの内側、ダンディー・ヒルズの兄弟。ヴァン・デューザー回廊を抜ける夏の海風が、午後遅くに劇的な気温低下をもたらす。積算温度に基準温度60°Fを明記している数少ないAVA。
規定に名前が出てくる品種
アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。
面積37,900エーカーは、TTBが確定した数値ではなく申請者の見積もりです。規則は「申請者は提案区域が37,900エーカーを含むと見積もっている」と書いています。また2018年の改正(T.D. TTB-155、83 FR 64279)の内容は今回読んでいません。
黒ぶどう・共通
- ピノ・ノワール制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
- ピノ・グリ制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
- シャルドネ制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
規定の要点
- 27 CFR § 9.202。T.D. TTB-51、71 FR 40404(2006年7月17日)。改正は T.D. TTB-155、83 FR 64279(2018年12月14日)
- オレゴン州ポーク郡・ヤムヒル郡
- 条文が「ウィラメット・ヴァレーAVAの内側に完全に含まれる」と明記している
- 承認地図は6枚(Rickreall/Salem West/Mission Bottom/Dayton/McMinnville/Amity)
- 境界は州道(State Highway 22、221)・郡道・200フィート等高線・測量区画をたどる。起点はオーク・ノール・ゴルフコースの近く
- 面積は約37,900エーカー、ぶどう植栽約1,244エーカー(ただし規則は「申請者が見積もった」と書いている)
- 地質は中新世の溶岩流由来の玄武岩がエオラ・ヒルズを、漸新世の海成堆積岩が低標高部を構成する
- 土壌は玄武岩由来のネキア土壌(最近ゲルダーマン土壌に再分類された)とリトナー土壌・ジョリー土壌。副次的にスタイワー、シェフルパム、ヘルミック、ウッドバーン
- ぶどう園の大部分は標高250〜700フィート
- 年降水量はエオラ・ヒルズ南東端の40インチ未満から高所の45インチ超まで。生育期の降水は約15%だけ
- 積算温度は生育期(4月1日〜10月31日)で2,300〜2,500単位、基準温度60°F
- ヴァン・デューザー回廊を抜ける夏の海風が、午後遅くに劇的な気温低下をもたらす
- AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
- ラベル表示は連邦の85%。オレゴン州 OAR 845-010-0920(2) により、この産地のぶどう95%以上+残り5%もオレゴン州産100%。品種表示は OAR 845-010-0915(1) により90%以上(例外18品種にピノ・ノワールは入っていない)。原産地呼称の表示そのものが義務
この産地でわかったこと
積算温度に基準温度を明記している——これが地味に重要です。「生育期(4月1日〜10月31日)で2,300〜2,500単位、基準温度60°F」。他の産地が使っているウィンクラー系の積算温度は基準50°Fなので、この数字をヤキマ・ヴァレーの2,641やラザフォードの3,159と並べて比べることはできません。規則が基準温度を書いているおかげで、その罠に気づけます。この産地の性格はヴァン・デューザー回廊という地形に集約されます。海岸山脈の切れ目を抜けてくる夏の海風が、午後遅くに気温を一気に下げる。ロシアン・リヴァー・ヴァレーのペタルマ・ギャップと同じ構造で、冷気の通り道が産地をひとつにまとめている例です。もうひとつ、土壌の記述に「ネキア土壌(最近ゲルダーマン土壌に再分類された)」とあるのが珍しい。土壌分類の改称まで規則が書き込んでいます。兄弟のダンディー・ヒルズはジョリー土壌が8割、こちらはネキア(ゲルダーマン)とリトナーとジョリーで、同じ玄武岩由来でも配合が違います。
出典
生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.202 Eola-Amity Hills
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.202名称・承認地図・境界・親AVAの明記(2026年10月6日に確認)「is entirely within the Willamette Valley viticultural area」
生産規定連邦官報(Federal Register)— エオラ=アミティ・ヒルズAVAの設定
https://www.federalregister.gov/documents/2006/07/17/E6-11077/establishment-of-the-eola-amity-hills-viticultural-area-2002r-216pT.D. TTB-51、71 FR 40404(2006年7月17日)。地質・土壌・標高・降水量・積算温度と基準温度・ヴァン・デューザー回廊(2026年10月6日に確認)「Summer ocean winds vented through the corridor often cause dramatic late afternoon drops in temperature.」
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。