ラザフォード(Rutherford)はアメリカのAVA。規定は品種の比率を定めていない。当サイトは一次資料3件から引いている。
約6,650エーカー。オークヴィルの真北にあり、最終規則が積算温度をラザフォード基準の±%で並べている。境界に固定資産税の地番を使っているのが特徴。
規定に名前が出てくる品種
アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。
ナパ・ヴァレーAVAの内側であることを明記した一次資料は見つかりませんでした。§ 9.133 の条文に「Napa Valley」の文字が一度も出てきません(2回確認)。出てくるのは「Napa County」と「Napa River」だけです。最終規則の本文はナパ・ヴァレーAVAに触れていますが、条文レベルの親子の明文はありません。また制定時の資料に挙がっている品種のうち、ヨハニスベルク・リースリングとジンファンデルは1回しか確認できなかったため載せていません。セント・ヘレナとカリストガの積算温度も1回だけだったため採用していません。
黒ぶどう・共通
- カベルネ・ソーヴィニヨン制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
- シャルドネ制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
- ソーヴィニヨン・ブラン制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
規定の要点
- 27 CFR § 9.133。T.D. ATF-342、58 FR 35876(1993年7月2日)。改正なし
- カリフォルニア州ナパ郡
- 承認地図はUSGSの1:24,000図2枚(ヨントヴィル1951年版/ラザフォード1951年版)
- 境界は15区間。起点はシルヴァラード・トレイルとスケレンジャー・レーンの交点
- 境界が使う基準は郡道名・小路名・ナパ川の河床中心線・無名の小川・サザン・パシフィック鉄道の線路・方位と距離・500フィート等高線・測量区画の線・固定資産税の地番(Assessor's Parcel Numbers)
- 面積は約6,650エーカー。ほとんどが密に植えられたぶどう畑
- 積算温度はラザフォードを基準(分母)に置いて隣接地を±%で並べる書き方。カリフォルニア大学農業普及部のデータでラザフォード3,159/オークヴィル3,124(−1%)、ラザフォード・アンド・オークヴィル委員会の1985〜1988年のデータでラザフォード3,389/オークヴィル3,039(−10%)
- 年降水量は35〜40インチ
- 土壌は谷床がベイル=コール=ヨロ系統とプレザントン系統。さらに細かくはベイル・スラウの土壌と、フランシスカン層を母材とするベア・キャニオン扇状地の土壌
- 標高は500フィート等高線で谷床と山地を分ける。一部380フィート地点あり
- AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
- ラベル表示は連邦の85%+カリフォルニア州内で全面的に仕上げること。加えてカリフォルニア州法(B&P Code § 25241)により、「Napa」の語またはナパ郡内のAVA名をラベルに使うには、ナパ郡の原産地呼称をラベルに併記しなければならない
この産地でわかったこと
固定資産税の地番を境界に使っています。小路と鉄道と河床中心線と500フィート等高線の間に、「この地番の区画まで」という行政の台帳の線が混ざっている。ソノマ・ヴァレーが郡の税務査定官の地図を承認地図に入れているのと同じ発想で、ワインの産地の線が、課税台帳の線と地続きになっている例です。積算温度の示し方も独特で、ラザフォードを分母に置いて隣接地を±%で並べる。オークヴィルの最終規則が「ラザフォードを0%としてオークヴィルは−1%」と書いているのと表裏の関係で、この2つのAVAは互いを基準にして自分を説明していることになります。出典が2つあり、どちらも同じ方向(オークヴィルのほうが涼しい)を示しながら差は−1%と−10%で10倍違う。規定が複数のデータを並べて見せているのは誠実です。なおオークヴィルと同じく、条文に親AVAの明記はありません。同じナパ郡でもハウエル・マウンテンの条文は「ナパ・ヴァレーAVAの一部である」と書いているので、明文があるAVAとないAVAが郡内で分かれています。
出典
生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.133 Rutherford
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.133名称・承認地図・境界の条文(2026年10月6日に確認)
生産規定アルコール・タバコ税貿易局(TTB)— Rutherford 最終規則
https://ttb.gov/system/files/2025-01/Rutherford_final_rule.pdfT.D. ATF-342、58 FR 35876(1993年7月2日)。面積・積算温度の比較表・土壌系統・降水量・境界に使う基準(2026年10月6日に確認)
生産規定カリフォルニア州 Business and Professions Code § 25241(ナパの呼称併記義務)
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/codes_displaySection.xhtml?lawCode=BPC§ionNum=25241「Napa」の語またはナパ郡内のAVA名を使うときの呼称併記義務(2026年10月6日に確認)
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。