ナパ・ヴァレーの中南部、約5,760エーカー。東西の山地との境は原則500フィートの等高線で引かれる。ただしバッカス・テラスという4段の平坦面を取り込むため、1か所だけ1,006フィートまで上がる。
規定に名前が出てくる品種
アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。
ナパ・ヴァレーAVAの内側であることを明記した一次資料は見つかりませんでした。§ 9.134 の条文にも1993年の最終規則にも「within the Napa Valley viticultural area」という一文がありません。最終規則が述べているのは「ナパ市の北西約10マイル、ナパ・ヴァレーの中南部に位置する」という地理的な記述だけです。ナパ・ヴァレーAVAがノース・コーストAVAの内側にあることも、今回 § 9.23 と § 9.30 を読んでいないため確認していません。
黒ぶどう・共通
- カベルネ・ソーヴィニヨン制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
- シャルドネ制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
- ソーヴィニヨン・ブラン制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
規定の要点
- 27 CFR § 9.134。T.D. ATF-343、58 FR 35884(1993年7月2日)。施行1993年8月2日。改正なし
- 承認地図はUSGSの1:24,000図2枚(ヨントヴィル/ラザフォード、いずれも1951年版)
- 境界は17区間。起点はシルヴァラード・トレイルとスケレンジャー・レーンの交点
- 東西の山地との境は、1か所の例外を除いて500フィートの等高線。北はスケレンジャー・レーン、南はヨントヴィル・ヒルズ付近の堆積尾根とレクター・クリーク
- 例外は東側で、バッカス・テラス(隆起した旧谷底の4段の平坦面)を取り込むため1,006フィートの標高点まで上がっている
- 面積は約5,760エーカー(=9平方マイル)。制定時のワイナリーは13
- 土壌は谷床がベイル=コール=ヨロ系統(ほぼ水平から緩傾斜で排水良好な沖積土)、中央部がプレザントン系統、東斜面がブーマー系統。バッカス・テラスはソノマ火山岩起源の沖積扇状地堆積物
- 気候は「北のラザフォード周辺より涼しく、南のヨントヴィル周辺より暖かい」。最終規則の比較表ではカリストガ3,369/セント・ヘレナ3,229/ラザフォード3,159/オークヴィル3,124(ラザフォードを0%としてオークヴィルは−1%)。冷涼側のリージョン・ツー。年降水量は約35インチ
- AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
- ラベル表示は連邦の85%+カリフォルニア州内で全面的に仕上げること。「Oakville」と書くには85%がオークヴィル産、「Napa Valley」と書くには85%がナパ・ヴァレー産という独立した判定になる
この産地でわかったこと
境界の原則が500フィートの等高線で、例外がひとつだけある——そのひとつがバッカス・テラスです。隆起した旧谷底の4段の平坦面で、これを取り込むために東側だけ1,006フィートまで線を上げている。等高線で機械的に切るのではなく、地形の履歴を見て例外を作っているわけです。積算温度の立論の仕方も面白くて、最終規則はオークヴィルの3,124という数字を単独で示さず、ラザフォードを0%としてカリストガ+7%、セント・ヘレナ+2%、オークヴィル−1%と隣との差で示します。ナパ・ヴァレーという長い谷のどこに位置するかを、相対値で説明している。なお条文には親AVAの明記がなく、最終規則が「ナパ・ヴァレーの中南部に位置する」と地理的に述べているだけです。ダンディー・ヒルズの条文が「ウィラメット・ヴァレーAVAの内側に完全にある」と書いているのと対照的です。
出典
生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.134 Oakville
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.134名称・承認地図・境界の条文(2026年10月6日に確認)
生産規定アルコール・タバコ税貿易局(TTB)— Oakville 最終規則
https://ttb.gov/system/files/2025-01/Oakville_final_rule.pdfT.D. ATF-343、58 FR 35884(1993年7月2日)。面積・土壌系統・積算温度・500フィート等高線とバッカス・テラスの例外(2026年10月6日に確認)「This same elevation line has been used, with one exception, to differentiate the Oakville viticultural area from the mountains to the east and west.」
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。