1981年に承認されたカリフォルニアの古いAVA。周囲の山の稜線をたどって境界を引き、郡の税務査定官の地図を承認地図に入れている。最終規則に書かれている根拠は「名前が知られている」「山に囲まれて気候が違う」の2点だけ。
規定に名前が出てくる品種
アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。
面積、土壌の記述、制定時の資料に挙がっている品種は取得できませんでした。1981年の最終規則(T.D. ATF-96)を2回、違う角度で読みましたが、AVA全体の面積はエーカーも平方マイルも記載自体がありません(唯一の面積の数字は「1900年当時ソノマ・ヴァレーに約4,000エーカーのぶどう畑があった」という歴史の記述で、これはAVAの面積ではありません)。土壌の記述も品種名も1つもありません。また、ソノマ・ヴァレー自体がノース・コーストAVAの内側にあることを明記した一次資料にも到達できませんでした。
規定の要点
- 27 CFR § 9.29。T.D. ATF-96、46 FR 59238(1981年12月4日)。施行1982年1月4日、ラベルへの強制適用は1983年1月1日から
- 承認地図はUSGSの7.5分図9枚と、ソノマ郡とナパ郡の郡境を示すソノマ郡税務査定官の地図
- 境界は11区間。トレイ・クリークとサン・パブロ湾を起点に、ハイウェイ・山頂・郡境をたどって湾岸へ戻る。最終規則は境界が周囲の山の稜線をたどると説明している
- 承認の根拠は①名称が地域的または全国的に知られていること②西のソノマ・マウンテンズと東のマヤカマス山脈が地域を地理的に隔離していることによる気候の違い
- 気候の記述は「サンタ・ローザ以北のソノマ郡の他の部分より降水量が少ない」「ペタルマ側からの濃い霧が山に遮られる」「夏と冬の気温の極端が和らげられる」のみ
- AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
- ラベルに「Sonoma Valley」と書くには、そのAVA産のぶどうが85%以上(27 CFR 4.25(e)(3)(ii))。加えてカリフォルニア州内で全面的に仕上げること
- 2013年にムーン・マウンテン・ディストリクト・ソノマ・カウンティAVAが「ソノマ・ヴァレーAVAの内側に完全に含まれる」として設定された(=子AVAを持つ親AVA)
この産地でわかったこと
この産地の最終規則には、面積も土壌の系統名も品種名もひとつも書かれていません。書かれているのは「名前が知られている」「周囲の山に囲まれて気候が違う」という二行だけ。いっぽう2004年のダンディー・ヒルズには、面積・植栽面積・圃場数・土壌系統名・降水量・標高・積算温度がすべて書かれています。AVAという制度は、条文の形は40年変わらないまま、前文の厚みだけが変わってきたことがこの2つを並べると見えます。もうひとつ目を引くのは、承認地図に郡の税務査定官の地図が入っていること。等高線(オークヴィル)や測量線(パソ・ロブレス)ではなく、行政の図面を境界の根拠にしている例です。
出典
生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.29 Sonoma Valley
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.29名称・承認地図・境界の条文(2026年10月6日に確認)
生産規定アルコール・タバコ税貿易局(TTB)— Sonoma Valley 最終規則
https://www.ttb.gov/system/files/images/pdfs/Sonoma_Valley_final_rule.pdfT.D. ATF-96、46 FR 59238(1981年12月4日)。承認の根拠(2026年10月6日に確認)「the Sonoma Valley viticultural area is distinguishable from the surrounding areas because of its climate」
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。