当サイトのAVAでただひとつ、川も道路も等高線も使わずに境界を引いている産地。最終規則が「物理的な特徴で境界を描く実行可能な方法がない」と明言し、測量システムのタウンシップ線とレンジ線だけで約614,000エーカーを切り取った。
規定に名前が出てくる品種
アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。
2009年の拡張後の合計面積は、規定にも最終規則にも書かれていません。2009年の規則は「既存の609,673エーカーのAVAを約2,635エーカー拡張する」と書くだけで、合計値を記載していません(612,308エーカーは当サイトの足し算です)。また1983年の「約614,000エーカー」と2009年の「609,673エーカー」の差については、あいだに1996年の境界改正(T.D. ATF-377)が入っていますが、その規則の本文は取得できていません。2014年に設定された11の子AVAは今回調べていません。なお2009年の拡張規則に出てくる「リージョンII、積算温度約2,900単位」「年降水量29インチ」は、拡張部分のサンタ・マルガリータ・ヴァレーについての数値で、パソ・ロブレスAVA全体の値ではありません。AVA全体の値として採用しているのは1983年原規則のリージョンIII/3,001〜3,500/10〜25インチです。
黒ぶどう・共通
- ジンファンデル(プリミティーヴォ)制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
規定の要点
- 27 CFR § 9.84。T.D. ATF-148、48 FR 45241(1983年10月4日)。1996年(T.D. ATF-377)と2009年(T.D. TTB-72、74 FR 3429)に改正・拡張
- 承認地図はUSGSの1:250,000スケール「San Luis Obispo, California」1枚だけ
- 境界は、サンルイスオビスポ郡・キングス郡・カーン郡の3郡境が交わる点を起点に、タウンシップ線・レンジ線・郡境・直線だけでたどる
- 最終規則が理由を明記している。「小川、道路、等高線のような物理的特徴を使って境界を描く実行可能な方法がない」
- 例外的にドーヴァー・キャニオン・ジープ・トレイル、ドーヴァー・キャニオン・ロード、ランチョ・パソ・デ・ロブレス(スペイン植民地時代の牧場境界)が部分的に現れる
- 面積は1983年の原規則が「約614,000エーカー」。圃場62か所・約5,000エーカー、ワイナリー13(最古は1890年のロッタ・ワイナリー)
- 2009年の拡張規則は「既存の609,673エーカーのAVA」を2,635エーカー拡張
- 拡張後のAVAはサンルイスオビスポ郡とセントラル・コーストAVAの内側に完全に含まれる
- 承認の根拠(1983年原規則)はウィンクラー区分リージョンIII、積算温度3,001〜3,500単位/日較差40〜50°F/年降水量10〜25インチ/標高600〜1,000フィート/土壌は「おおむね沖積層と段丘堆積物で、肥沃で排水良好」
- サンタ・ルシア山脈により海洋性の空気と沿岸の霧から遮られている(=レインシャドウ)
- AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
- ラベル表示は連邦の85%+カリフォルニア州内で全面的に仕上げること
この産地でわかったこと
「物理的な特徴で境界を描く実行可能な方法がない」と最終規則が自分で書いている——これは当サイトのAVAでここだけです。だからパソ・ロブレスの境界は、公有地測量システム(PLSS)のタウンシップ線とレンジ線、そして郡境と直線だけで引かれています。承認地図も1:250,000の1枚だけ。オークヴィルが500フィート等高線で谷床と山を切り分け、ソノマ・ヴァレーが山の稜線をたどり、コロンビア・ヴァレーが2,000フィート等高線で盆地を切り取るのに対して、パソ・ロブレスは地図の格子で切り取られている。例外として部分的に現れるのがスペイン植民地時代の牧場(ランチョ)の境界で、19世紀の土地台帳がそのまま2020年代のワイン法に残っていることになります。
出典
生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.84 Paso Robles
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.84名称・承認地図・境界の条文と改正履歴(2026年10月6日に確認)
生産規定アルコール・タバコ税貿易局(TTB)— Paso Robles 最終規則
https://www.ttb.gov/system/files/images/pdfs/Paso_Robles_final_rule.pdfT.D. ATF-148、48 FR 45241(1983年10月4日)。境界の方法と承認の根拠(2026年10月6日に確認)「there is no feasible method to delineate the boundaries by using physical features such as streams, roads, contour lines」
生産規定連邦官報(Federal Register)— パソ・ロブレスAVAの拡張
https://www.federalregister.gov/documents/2009/01/21/E9-994/expansion-of-the-paso-robles-viticultural-area-2008r-073pT.D. TTB-72、74 FR 3429(2009年1月21日)(2026年10月6日に確認)
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。