リスボンの南の酒精強化ワイン。67%でDOになれるが、ラベルに「モスカテル・デ・セトゥーバル」と名乗るには85%という二段のしきい値を持つ。アルコールに上限があるのも珍しい。
規定で認められている品種
生産規定に列挙されている品種です。当サイトに解説ページがあるものはリンクしています。
この規定書には、PDO-PT番号も版も日付も書かれていませんでした。根拠法令は Portaria n.º 118/2014(Portaria n.º 346/2015 で改正)です。より新しい版が存在する可能性は否定できません。
黒ぶどう・共通
- モスカテル・ガレゴ・ロショ原文表記: Moscatel-Galego-Roxo。赤のDOセトゥーバルの主役
白ぶどう
- ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン原文表記: Moscatel-Galego-Branco
- マスカット・オブ・アレキサンドリア原文表記: Moscatel-Graúdo
- アンタン・ヴァス原文表記: Antão-Vaz
- アリント原文表記: Arinto(別名 Pedernã)
- フェルナン・ピレス原文表記: Fernão-Pires
- マルヴァジア・フィナ原文表記: Malvasia-Fina
- ヴェルデーリョ原文表記: Verdelho
- ラボ・デ・オヴェーリャ原文表記: Rabo-de-Ovelha
規定の要点
- 規定書は品種を推奨/認可に分けていない(単一リスト)
- 白のDOセトゥーバルはモスカテル・デ・セトゥーバルが果汁の67%以上、赤はモスカテル・ロショが67%以上
- ラベルに「Moscatel de Setúbal」と書くには、その品種が果汁の85%以上
- 収量は「rendimento base(基準収量)」として100hl/ha。ほかの産地が「máximo(最大)」と書くところを「base」と書いている
- 実効アルコール度数は16%vol以上22%vol以下と、上限まで定めている。果汁側の潜在的な自然アルコール度数は10.0%vol以上
- 酒精強化は52〜86%volのぶどう由来ブランデー(aguardente vínica)、または96%vol以上のぶどう由来アルコール(álcool vínico)で発酵を止める
- 熟成は18か月以上が義務。「Superior」は品質審査に加えて5年以上
- 年数表示は5年・10年・15年・20年・25年・30年・35年・40年と5年刻みで認められる
この産地でわかったこと
67%と85%という二段のしきい値を持っているのが面白いところです。67%あればDOセトゥーバルになれますが、ラベルに「モスカテル・デ・セトゥーバル」と名乗るには85%必要。「呼称の資格」と「名前を呼ぶ資格」を分けているわけです。もうひとつ、アルコール度数に上限(22%vol)があるのも珍しい。多くの産地は下限しか決めません。酒精強化剤も「52〜86%volのブランデー」か「96%vol以上のアルコール」の二択で、96%の中性アルコールしか認めないマデイラより自由度が高くなっています。
出典
生産規定ポルトガル ブドウ・ワイン研究所(IVV, I.P.)— DO Setúbal 生産規定
https://www.ivv.gov.pt/wp-content/uploads/2026/02/DO_Setubal.pdf根拠は Portaria n.º 118/2014(Portaria n.º 346/2015 で改正)。品種リスト、67%と85%の比率、基準収量、アルコール度数の上下限、酒精強化、熟成と年数表示(2026年10月6日に確認)「A designação Moscatel de Setúbal só pode ser usada quando esta casta contribua com, pelo menos, 85% do mosto utilizado.」
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。