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アメリカ / AVA

スタ・リタ・ヒルズ

Sta. Rita Hills

北と南を丘に挟まれた東西に開いた「喉」の構造。そこから太平洋の冷気と霧が内陸へ入る。2006年にチリのワイナリーとの混同を避けるため名称が短縮され、規定にその移行手続きが条文として書き込まれている。

規定に名前が出てくる品種

アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。

2016年の拡張後の合計面積は規則に書かれていません(約35,676エーカーは当サイトの足し算です)。また2001年の「48平方マイル超」と2016年の「約33,380エーカー」は年も単位も違うため、並べて載せています。正式な土壌系統名(soil series)は取得できませんでした。2001年の規則も2016年の規則も「ローム、砂質ローム、シルト質ローム、粘土質ローム」「ローム、砂、シルト、粘土」までで、土壌調査の系統名は挙げていません。2001年規則の積算温度の数値は採用していません。「西端のロンポック側で年92、東端のカチューマ・レイク側で153」と読めましたが、通常のウィンクラー積算温度(数千単位)と桁が合わず、原文の表記か読み取りかを切り分けられませんでした。承認地図の枚数も確定していません。条文が「5枚」と書きながら6枚列挙されていると読めましたが、1回しか読んでいません。

黒ぶどう・共通

  • ピノ・ノワール制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない
  • シャルドネ制定時の最終規則に挙がっている品種。規定上の義務ではない

規定の要点

  • 27 CFR § 9.162。T.D. ATF-454、66 FR 29479(2001年5月31日、原名 Santa Rita Hills)。2005年に名称を「Sta. Rita Hills」に短縮(T.D. TTB-37)、2016年に拡張(T.D. TTB-141)
  • 規定が「Sta. Rita Hills はぶどう栽培上の重要性をもつ用語である」と明文で定めている(§ 9.162(a))
  • § 9.162(d) は名称変更の移行規定。旧名を使えた期間(2001年7月30日〜2006年1月5日)と、旧名のラベル承認証が2007年1月6日に規則の作用で自動失効したことを定めている
  • 承認地図はUSGSの7.5分図(ロンポック/ロンポック・ヒルズ/ロス・アラモス/サンタ・ローザ・ヒルズ/ソルヴァング/ザカ・クリーク)
  • 境界は20区間。起点はT.6N, R.32W のセクション27にある標高1600フィートの無名の丘(=標高点と測量区画で特定するタイプ)
  • 面積は2001年の原規則が「48平方マイル超」。2016年の拡張規則は「約33,380エーカーのAVA」を約2,296エーカー拡張
  • 既存のAVAと拡張部分はどちらも、より大きなサンタ・イネス・ヴァレーAVAとセントラル・コーストAVAの内側に完全に含まれる(=二重の入れ子)
  • 承認の根拠は東西に走る海洋性の「喉(throat)」の構造。北のプリシマ・ヒルズと南のサンタ・ローザ・ヒルズに挟まれ、東西に開いていて、太平洋の冷気と霧が内陸へ入る
  • ヴェレゾン後の平均成熟期気温が、隣のサンタ・イネス・ヴァレーより14.7°F低い
  • ウィンクラー区分はリージョン・ワン(隣のサンタ・イネス・ヴァレーはリージョン・ツー)
  • 土壌はローム・砂質ローム・シルト質ローム・粘土質ロームで、沖積と海成の砂の比率が高い。標高は海面付近〜1,800フィート
  • 2016年の拡張は、既存の境界が3つの商業圃場のうち2つを分断していたことが理由
  • AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
  • ラベル表示は連邦の85%+カリフォルニア州内で全面的に仕上げること

この産地でわかったこと

規定が「この名前はぶどう栽培上の重要性をもつ用語である」と自分で宣言している——AVAの条文がラベル法の側に効くことを、ここは明文で見せています。さらに§ 9.162(d) は名称変更の移行手続きそのもので、旧名「Santa Rita Hills」のラベル承認証が2007年1月6日に規則の作用で自動失効したことまで書き込まれています。チリのサンタ・リタ社との混同を避けるための改名でしたが、産地の規定に「名前をめぐる争いの決着」が化石のように残っている例です。地理のほうは「喉(throat)」という言葉で説明されていて、北と南を丘に挟まれ東西に開いた地形から冷気が入る。隣のサンタ・イネス・ヴァレーより成熟期の気温が14.7°F低く、ウィンクラー区分がひとつ違う——それでいてサンタ・イネス・ヴァレーの内側にあるという入れ子になっています。

出典

生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.162 Sta. Rita Hills
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.162名称・用語としての重み・承認地図・境界・名称変更の移行規定(2026年10月6日に確認)「For purposes of part 4 of this chapter, 'Sta. Rita Hills' is a term of viticultural significance.」

生産規定連邦官報(Federal Register)— サンタ・リタ・ヒルズAVAの設定
https://www.federalregister.gov/documents/2001/05/31/01-13645/establishment-of-santa-rita-hills-viticultural-area-98r-129-pT.D. ATF-454、66 FR 29479(2001年5月31日)。喉の構造と気温差(2026年10月6日に確認)

生産規定連邦官報(Federal Register)— スタ・リタ・ヒルズAVAの拡張
https://www.federalregister.gov/documents/2016/08/22/2016-19998/expansion-of-the-sta-rita-hills-viticultural-areaT.D. TTB-141、81 FR 56504(2016年8月22日)。面積と親AVA(2026年10月6日に確認)「The established viticultural area and the expansion area are both located entirely within the larger Santa Ynez Valley viticultural area and the multicounty Central Coast viticultural area.」

規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。