アレクサンダー・ヴァレー(Alexander Valley)はアメリカのAVA。規定は品種の比率を定めていない。当サイトは一次資料3件から引いている。
改正5回は当サイトのAVAで最多。現在の面積は67,710エーカー。承認の根拠の立て方が独特で、境界から除外した側の土壌を挙げて線引きを正当化している。
規定に名前が出てくる品種
アメリカのAVA(American Viticultural Area)は、品種も収量も最低アルコール度数も縛りません。27 CFR 9.12 が申請者に求めるのは、①その名称が実際にぶどう栽培地と結びついていることの証拠、②境界をそこに引く根拠、③気候・地質・土壌・地形・標高の識別的特徴、④USGS地形図に境界を描き込んだもの——この4つだけです。AVA名が効いてくるのはラベルの側で、27 CFR 4.25(e)(3)(ii) が「そのAVAの境界内で育ったぶどうが85%以上」と定めています。品質の規格ではなく、原産地の真正性の規格です。したがって以下に品種を挙げている場合、それは制定時の最終規則が栽培の実態として記述している品種であって、規定上の義務ではありません。
1984年の承認時の総面積は規則に書かれていません。載っているのは申請案の数値(A案35,000エーカー/B案の追加31,000エーカー)だけで、承認されたAVAの総面積の記載がありません(2回確認)。上に載せている67,710エーカーは2008年の改正規則の記載値です。また気候の数値(降水量25〜50インチ、気温58〜60°F、無霜240〜270日)は「B案の範囲」について述べた数値で、承認後のAVA全体の数値とは明記されていません。2008年規則に出てくる「320〜884フィート」が何を指すかは1回目と2回目で読みが食い違ったため採用していません(拡張部分の360〜874フィートのみ採用)。制定時の資料に挙がっている品種は、1984年・2008年のどちらの規則にも記載がありません。
規定の要点
- 27 CFR § 9.53。T.D. ATF-187、49 FR 42724(1984年10月24日)
- 改正5回(T.D. ATF-233/ATF-272/ATF-300/ATF-468/T.D. TTB-65、73 FR 12877、2008年3月11日)。当サイトのAVAで最多
- カリフォルニア州ソノマ郡北東部
- 承認地図はUSGSの7.5分図7枚
- 境界は測量のタウンシップ線とレンジ線、セクション線を主軸に、道路・小川・尾根線・山頂を併用
- 面積の明記は2008年の改正規則にしかない。「拡張の結果、67,710エーカーのAVAになる」。拡張分は北西の境界線沿いに1,300エーカー
- 1984年の原規則は申請案の数値しか書いていない(A案の範囲35,000エーカーのうち11,000がぶどう栽培、B案の追加31,000エーカーのうち1,700がぶどう栽培)
- 土壌は谷床がヨロ=コルティナ=プレザントン連合。境界から除外された山地は、グールディング=トゥームズ=グエノック連合とヘネケ=メイメン連合
- 気候はウィンクラー区分でB案の範囲がリージョン3(ロシアン・リヴァーAVAはリージョン2)。B案の範囲は年降水量25〜50インチ、気温58〜60°F、無霜期間240〜270日
- 約20マイルの谷で標高差は約180フィート。ロシアン川を軸とし、東・北はマヤカマス山脈
- 2008年の拡張部分は標高360〜874フィート、土壌はヒューゴ=ジョセフィン=ラフリン連合、「排水良好で、緩やかな傾斜から非常に急な傾斜の礫質ローム」
- AVAは品種も収量も最低アルコール度数も縛らない
- ラベル表示は連邦の85%+カリフォルニア州内で全面的に仕上げること。加えて州法 B&P Code § 25242 により、「Sonoma」の語がラベルに現れたときだけソノマ郡の呼称併記義務が発動する
この産地でわかったこと
境界から除外した側の土壌を挙げて、線引きを正当化しています。谷床のヨロ=コルティナ=プレザントン連合に対して、「除外した山地はグールディング=トゥームズ=グエノック連合とヘネケ=メイメン連合である」。何が入っているかではなく、何を出したかで境界を説明する書き方です。もうひとつ、隣のドライ・クリーク・ヴァレーとの関係が面白い。ドライ・クリーク・ヴァレーの最終規則は、アレクサンダー・ヴァレーを「ぶどう栽培上は似ている(viticulturally similar)」としたうえで、「高地(uplands)で分けられている」ことを別AVAである根拠にしています。似ていることを認めたうえで、地形で線を引いている。改正5回は当サイトのAVAで最多で、1984年の原規則には総面積すら書かれていません。現在の67,710エーカーという数字は、24年後の2008年の改正規則で初めて明記されました。
出典
生産規定電子連邦規則集(eCFR)— 27 CFR § 9.53 Alexander Valley
https://www.ecfr.gov/current/title-27/section-9.53名称・承認地図・境界の条文と改正履歴5件(2026年10月6日に確認)
生産規定アルコール・タバコ税貿易局(TTB)— Alexander Valley 最終規則
https://www.ttb.gov/system/files/images/pdfs/Alexander_Valley_final_rule.pdfT.D. ATF-187、49 FR 42724(1984年10月24日)。土壌連合・気候・標高差(2026年10月6日に確認)
生産規定連邦官報(Federal Register)— アレクサンダー・ヴァレーAVAの拡張
https://www.federalregister.gov/documents/2008/03/11/E8-4789/expansion-of-the-alexander-valley-viticultural-area-2005r-501pT.D. TTB-65、73 FR 12877(2008年3月11日)。総面積67,710エーカーの明記(2026年10月6日に確認)「The expansion would result in a viticultural area of 67,710 acres.」
規定は改正されます。掲載しているのは各出典を確認した時点の内容です。実際の商品がその規定に沿っているかは、生産者の表示をご確認ください。フランスのAOCについては、INAOが公開する生産規定に改正案(PNO版)と官報で確定した版があります。PNO版は旧い数値に取り消し線を引いて新しい数値を併記する形式のため、当サイトは新しい数値を採用し、確定版で突き合わせられなかったものはその旨を書いています。イタリアは農業・食料主権・森林省(Masaf)が公開する統合版の生産規定、スペインは農業・漁業・食料省(MAPA)または州の所管機関・統制委員会が公開する生産規定、ポルトガルはブドウ・ワイン研究所(IVV)とドウロ・ポルトワイン協会(IVDP)が公開する生産規定・技術仕様書、オーストリアは連邦法令情報システム(RIS)のDAC法令と連邦農林・地域・水資源省(BMLUK)が公開する製品仕様書を使っています。ドイツは欧州委員会のeAmbrosiaに登録された製品仕様書(Technische Unterlage)を使っています。フランスの一部の産地も、eAmbrosiaに登録されたEU登録版の技術仕様書を使っています。これは改正案(PNO版)が混ざらない代わりに要約文書なので、最低糖度や品種の比率が記載されていないことがあり、その場合はその旨を書いています。アメリカのAVAは電子連邦規則集(eCFR)の27 CFR Part 9 が条文で、承認の根拠は制定時に連邦官報(Federal Register)に載った最終規則の前文にあります。1994年より前の最終規則は連邦官報のサイトに収録がないため、アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が自ら公開しているPDFを使っています。